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「設計されるAI」と「設計する人間」、Web制作の現場で起きていること|生成AIとWebの関係#02

2025.07.21 AIO/LLMO
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こんにちは、代表の丸山です。

前回は、「PoCで終わらせない、生成AIの“使われる設計”」というテーマで、AIO/LLMOの視点から、「AIをどう使うか」ではなく、「AIがある前提で業務全体をどう組み直すか」が問われているのではないか、AI活用を業務に根づかせるためには“再設計”が不可欠であるという話をしました。

この“前提としてのAI”という視点は、私たち制作の現場でも、日々リアルに感じていることです。

とくに、構造や言語、導線といった「設計そのもの」にAIが入り込んできている。あるいは、AIに引っ張られて設計が変わっていく。そんな局面が確実に増えてきています。

今回はその視点を深掘りし、「設計されるAI」と「設計する人間」のあいだで今、何が起きているのかを整理してみたいと思います。

人がAIを“設計する”プロセス

生成AIの登場以降、「構成を考える」「ライティングを補助する」「ビジュアルを生成する」など、様々な工程でAIを活用するようになりました。

そのとき、ユーザーである私たちが求められるのは、「何を、どのように伝えると、意図に近いアウトプットが返ってくるか」という設計力です。これはAIを“使う”のではなく、“設計する”という行為に近い。

たとえば、以下のようなプロセスは、私たちの制作現場でも日常的に発生しています。

活用シーン設計の工夫ポイント
構成案の作成読者像・目的・トーン・制約条件を記述
ビジュアル生成光の向き・構図・色味・使用媒体を明記
再プロンプト設計出力に対する評価 → 改善指示を具体的に反映

このように、AIを活かすには「設計」が不可欠。そして設計力とは、いかに自分の頭の中のあいまいなイメージを論理的に伝え、意図した成果物を引き出すかという、極めて人間的な知的作業です。

一見、AIが代替しているようで、実は「人間の設計力」が以前にも増して問われている。それが、いま起きている変化の本質のひとつだと感じています。

AIに“設計される”人間

一方で、私たち人間がAIによって“設計されている”場面も確実に増えています。

たとえば、SEO施策におけるコンテンツ制作の場面では、AIが検索上位の記事構造やキーワード配置を分析し、「こうすれば上がる」という“正解”を提示するサービスが増えてきました。

また、Adobe FireflyやCanvaといったツールでは、ユーザーのラフな入力に対して、一定のルールに基づいた配色やレイアウトをAIが提案してくれます。一見ありがたい仕組みに見えますが、これは逆に言えば、「美的バランスはAIが握っている」という状態でもあるわけです。

この図式になったとき、私たちはAIに設計される側に回っていると言えるのではないでしょうか。

もちろん、これはネガティブな意味ではなく、私たちがどこまでをAIに任せ、どこからを人が担うのかという線引きを意識できているかどうか。

「AIに任せていいこと/任せすぎないこと」を判断する視点こそ、いま最も必要とされている“設計力”なのかもしれません。

領域AIによる“設計”例設計者としての人間の視点
コンテンツ構成検索上位記事の分析に基づく自動構成提案本当に伝えたい順番か?自社の文脈と一致しているか?
デザインテンプレートから自動配色・レイアウトブランドカラーやトーンに合っているか?
コピーキーワード最適化に基づく文体提案自社らしい語り口か?顧客の言葉として自然か?

“人の手が通る”設計に宿るもの

では、AIが設計にも関わり、成果物の大部分をサポートしてくれるようになった今、「人が手を加える意味」とはどこにあるのでしょうか?

私自身、AIを使ってアイデアを出したり、記事構成をつくる補助として活用することは多々あります。ただ、最終的に採用されるのは、“整いすぎていない案”であることがほとんどです。

“整っていない”からこそ惹かれるポイント

  • コピーとビジュアルのズレが「引っかかり」を生む
  • 空間の余白が“意図しないリズム”を生み出す
  • テキストの言い回しが人間っぽく印象に残る

といったような、“正解ではないけれど魅力的な何か”は、今のところAIではつくりにくい。つまり、「ちょっとズレてる」が持つ力を、人間は本能的に知っているということだと思います。

さらに、Web制作では“感情の設計”も重要です。

  • クライアントの話し方からにじむ熱量
  • フィードバックのニュアンスから伝わる価値観
  • 曖昧な指示の行間を読んで設計に反映する力

こうした、人と人のやりとりから生まれる情報を設計に織り込むことは、今も人間にしかできない仕事です。

AIによる設計が進むからこそ、「整わなさ」や「曖昧さ」まで設計に取り込める人間の価値が、より明確になる。そんな時代になってきていると感じます。

まとめ

今回は、「設計されるAI」と「設計する人間」の視点から、制作の現場で起きている変化についてお話ししました。

生成AIが業務に浸透する中で、私たちは「どう使うか」だけでなく、「どう使われているか」という視点も持ち始めています。プロンプト設計や構造設計といった領域では、AIを設計する立場にある一方で、AIによって導かれた構成やレイアウトに、人間が寄せていく場面も増えています。

そんななかで、整いすぎないデザインや、会話の行間からにじむ感情のやりとり、言葉にしきれない違和感を丁寧に拾うこと。そうした“人にしかできない設計”の価値は、むしろ以前よりも高まっているように思います。

AIO/LLMOのような技術的な視点が注目される今だからこそ、私たち人間が担うべき“設計の意味”を問い直すことが求められているのではないでしょうか。

AIO/LLMO対策のご相談はユニオンネットまで。

AIO/LLMO視点で考える生成AIとWebの関係

#01:PoCで終わらせない、生成AIの「使われる設計」
#02:「誰が言うか」にAIはどう向き合うのか。信頼・ブランドの再定義
#03:「設計されるAI」と「設計する人間」、制作の現場で起きていること
#04:AIは検索を壊すのか?“回遊しないWeb”とLP時代のはじまり
#05:AIO/LLMOを業務に根づかせるには。WebとAIの“設計者”としてできること

既存サイトの見直しはもちろん、リニューアルや新規制作に向けた構造設計のご相談も可能です。

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この記事を描いたひと

untenna編集部

企業のWeb担当者と制作会社の想いをつなげるメディア「untenna」の編集部。

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