GA4とは?大幅変更のポイントからわかるこれからの アクセス解析
インターネットの活用の幅がますます広がる現在、自社のWebサイトがユーザーにどう利用されているか、伝えたいことがうまく伝わっているかはWebサイトの収益や意義に関わる大きな問題です。
Googleが提供しているGoogle Analytics(GA:グーグル・アナリティクス)は、Webサイトへのアクセスをさまざまな角度から分析し、ユーザーの流入元(どこから来たか)や流入キーワード(目的)、閲覧ページ(どのページを見たか)など項目ごとに記録、集計し総合的にユーザーの反応を把握するツールです。
2020年10月、Googleはその最新版であるGA4(グーグル・アナリティクス4)をリリースしました。この記事は、GA4の特徴と導入の背景、導入のタイミングについて解説します。
GA4とは?
GA4は、これまでの15年間の歴史の中でも、桁違いにユーザー行動を把握できる画期的なアクセス解析ツールといわれています。ただ、メリットが大きいだけに変更点も多く、正確に理解してうまく活用しなければ他のWebサイトに大きく差をつけかねられません。
ここではGA4の変更の概要と、大幅なバージョンアップが必要になった背景について解説します。
大きく変わったGA
GAを通して得られるアクセスデータを分析すると見えてくるのが、Webサイトのさまざまな施策への活用方法です。例えばページの閲覧回数や滞在時間、バナーのクリック数などから、人気の高い広告やWebページやそのデザイン・商品の傾向を絞ることができます。うまく活用すれば、訪れるユーザー層に合わせてサイトを設計することも、商品を選択することも可能。収益アップはもちろん、今後の運営にも役立つため、今では国内の上場企業の多くが導入しています。
しかし一方で、アプリからの流入や、同じページ数でも滞在時間が大きく違う動画サイトの閲覧といった、従来にはなかったユーザー行動が増えてきました。それを解析するためにGoogleが機能を拡張してきましたが、そうなると解析データの複雑化や、データの保持の負担が問題になってきます。このようなさまざまな課題を克服するため、GA4はこれまでとは大きく変わった仕組みと概念を持つGAとして導入されたのです。
大幅バージョンアップが必要な背景
従来のGAは、計測の基本単位は「ページ」でした。そのため、得られるデータは、ユーザーが閲覧したページのURLやタイトル、画面サイズをはじめ、直帰率(その1ページだけを見て離脱した割合)や平均閲覧ページ数(1度の訪問で平均何ページ閲覧したか)など、すべてページを軸としています。
しかし現在は、ページ単位での解析では以下の例のように正確に分析できず、問題となるケースが多くあります。
- ページを「開いた部分だけ閲覧してすぐ離脱」と「スクロールして全画面閲覧」が、どちらも同じ「1ページ閲覧」になってしまう
- ゲームなどの「ページ切り替えがない」場合、長時間プレイしても「1ページ閲覧」になる
- 動画の視聴時間が違うのにどちらも同じページ数として計測されてしまう
- アプリからの流入は、Webとは別に計測しなくてはならない
そこでGoogleはこれまでのページ単位ではなく「ユーザー単位」に変更し、計測方法もユーザー行動をより正確に分析できる「イベント」に変更されました。
旧バージョンとの違いとGA4のメリット
旧バージョンからの大きな変更により、GA4にはさまざまな新しいメリットが生まれました。ここでは主な4つのメリットについて解説します。
メリット①「アプリとウェブを統合的に分析」
最も特徴的なメリットは、Webサイト・アプリを個別ではなく統合的にアクセス解析できることです。
従来はWebならWebを、アプリならアプリを個別に解析していましたが、GA4では新しく「データストリーム」という概念が追加されました。これは、Web・iOS・Androidごとに収集したデータをユーザー別に紐付け、ユーザー行動を統合的に分析できる機能です。
また、以前はページビューならページビュー、イベントはイベントとして計測されていましたが、GA4ではどんなデータかに関わらずすべてイベントとして計測するようになりました。データの計測方法が変わり、レポートの様式も変わっています。
GA4におけるイベントは次の4つに分類されています。
自動的に収集されるイベント
これはGA4のタグやFirebaseSDKを設置すると、自動的に収集されるイベントです。アプリでユーザーが広告をクリックすると収集される「ad_click」や、Webで特定のタイプのファイルに移動するリンクをクリックすると記録される「fire_download」など、アプリ・Webそれぞれに用意されています
測定機能の強化
以前は計測したい項目ごとに設定が必要だったスクロール数やファイルのダウンロード数は、GA4ではウェブの「測定機能の強化」をオンにすることで自動的な計測が可能です。旧バージョンではがんばってコードを書く必要がありましたが、GA4では設定画面でスイッチをオンにするだけと非常に簡単に設定できます。
推奨イベント
このイベントはGA4がイベント名やパラメータ名を定義しているイベントです。ユーザーがログインすると記録される「login」や、コンテンツを検索したときの「search」など一般的なものばかりで、Googleも「すべてのプロパティで役立つイベント」として紹介されています。
カスタムイベント
上記3種類のイベントに該当しないものは、カスタムイベントとして自分で実装する必要があります。イベント・パラメータを自由に設定でき、実装にはGTMを使うのが一般的ですが、GA4ではごく簡単な条件のイベントの場合は管理画面から作成・編集できるようになりました。
メリット②「機械学習モデルを使った予測機能」
アクセス解析ではコンバージョンだけでなくその後のユーザー行動が重要な場合があります。例えばサブスクリプションモデルで、6カ月の継続契約で黒字化する場合、契約後いつ、どれくらいのユーザーが解約するかは大きな問題です。
GA4ではこのような「顧客の将来の行動」を、機械学習モデルを利用して予測できるようになりました。利用には特定の条件がありますが、満たしていればユーザーの購入予測や解約・離脱予測、売上予測も可能です。
メリット③「プライバシー重視のデータ収集」
GA4は、技術の発展に伴って求められるようになった「プライバシー」にも配慮されて開発されています。従来のGAではCookieなどの実データを基にしてレポートが作られますが、Cookieは便利な反面、漏洩すればプライバシー侵害など大きな損害の原因になりかねないリスクの高い仕組みです。
GoogleはGA4は「Cookieのない未来のアナリティクス」として、CookieやIDを利用できるかどうかに関わらず将来のニーズに適応できる設計になっています。
メリット④「BigQueryへのデータエクスポートが可能」
従来のGAではさまざまなデータが集計された結果を表やグラフ形式で見ることができましたが、GA4ではページビューやイベントごとにBigQueryに蓄積されたデータ(「生データ」ともいう)を個別にエクスポートすることができるようになっています。これを利用して、自社のデータベースと連結したり、個別に分析したりカスタマイズすれば、より「欲しい」データに加工することも充分可能です。
すぐにGA4へ移行すべきなのか?
旧バージョンとは大きく異なるGA4ですが、それゆえに仕組みのすべてを理解するのは簡単ではありません。2021年1月現在でもGA4に関する書籍は発売されておらず、解説しているWebサイトもわずかしかありません。従来のGAがやっと使いこなせるくらいの初心者にとって、この環境でGA4を導入するのは非常に高いハードルになるでしょう。
しかしアクセス解析ツールとしてのGAは、今後GA4が主流になるのは間違いありません。解析方法や得られるデータが異なる以上、早めに導入するのが望ましいといえます。そこでおすすめしたいのは、GA4を導入してGA4形式のデータ解析をしながらデータを記録し、現在必要なWeb解析には主に従来のGAを利用することです。そうすれば従来形式ながらもアクセス解析しつつ、GA4導入のための準備も進めることになります。
現時点で従来のGAサービスが停止されるという情報は開示されておらず、ひょっとすると今後数年にわたりこの状態が続くかもしれません。少なくともその間は、無理にGA4に完全移行する必要はないといえるでしょう。
GA4導入は早めがおすすめ
2020年10月に導入されたGA4は、旧バージョンとは大幅に変更されたGAです。近年のアクセス解析需要に対応するために、計測単位がページではなくイベントにかわり、アプリとウェブを統合的に分析する、機械学習を利用した予測機能が追加されるなど、従来のGAとはまったく違うGAといってもよいでしょう。
ただ、現在GA4に関する情報はWebを含めて決して多くなく、従来のGAからGA4に今すぐ完全移行するには大きなリスクがあります。そこでおすすめしたいのは、アクセス解析は主に従来のGAで、並行してGA4を導入してとりあえずデータ計測を始めるという並行利用です。
遠くない未来、おそらくGAの主流はGA4に移行するでしょう。しかし自社が移行するのは、GA4が充分活用でき、メリットが確実に得られることがわかってからでも遅くはありません。今できるのは、GA4への移行のために、まずは導入してデータ計測を始め、将来活用する基礎を作っておくことだといえます。
アクセス解析は覚えることが多いなぁ
この記事を描いたひと
企業のWeb担当者と制作会社の想いをつなげるメディア「untenna」の編集部。