OODAとPDCAの違いとは?OODAが必要な3つの理由を解説
PDCAと並んで注目を集めているのが「OODA」と呼ばれるフレームワークです。現場で活用しやすいといわれているOODAですが、PDCAとの違いが分からないという方も多いでしょう。
そこで本記事では、OODAが必要な理由やPDCAとの違いなどを解説します。
OODAとは何?
OODAとは「OODAループ」ともいわれ、アメリカの戦闘機操縦士で航空戦術家のジョン・ボイド氏が提唱した意思決定の方法です。
もともとは戦争における軍事戦略として朝鮮戦争で提唱されたことがはじまりで、イラク戦争時に有用性が実証されて注目を浴びるようになりました。
現在では新たなフレームワークとして、ビジネス現場でも活用されています。
OODAを回す4ステップ
OODAは「Observe」「Orient」「Decide」「Act」の頭文字から名付けられました。Observeは観察、Orientは仮説の構築、Decideは意思決定、Actは行動を意味します。
OODAを回す際は、この4ステップを踏まなければなりません。ここではOODAを回す4ステップについて詳しく解説します。
1.Observe
「Observe」はさまざまな視点で観察するステップです。観察といってもただ見るという意味ではなく、観察して相手の情報を収集するということです。
自分や相手の感情や状況、置かれている立場、顧客ニーズ、市場動向などといった情報を幅広く収集していきましょう。ここでしっかり情報収集しておくことで、次のステップで方向性が決めやすくなります。
2.Orient
「Orient」とは、仮説の構築をするステップです。観察によって入手したデータを統合・分析することによって、仮説を構築していきます。
ここで構築された仮説は、その後の行動を大きく左右することになり、OODAの中でも重要なステップです。「Orient」では、自他問わず判断の誤りに気付くことが成功であるといわれています。
OODAを高速で回すことで、多くの誤りにいち早く気付くことが重要です。
3.Decide
「Decide」は、意思決定をするステップです。「Orient」の仮説検証をもとに、実際にどのような行動を取っていくかを明確にします。
今後目指したいことを明確にしたうえで、目標を達成するための方法や選択肢を複数出しましょう。選択肢を出し切ったら、今後目指したいことと「Orient」の仮説検証とを照らし合わせ、効果的な方法を選択します。
4.Act
「Act」は実行のステップです。「Decided」で意思決定した行動を実践していきます。
ただし実行のステップが終わったからといって、OODAは終わりではありません。実行によって状況が変化している場合があるため、OODAを繰り返し行っていきます。
状況に変化がなくても新たな仮説構築の材料となるため、OODAを繰り返すことで精度を高められるのです。
PDCAとは何?
PDCAとは、PDCAサイクルともいわれ、アメリカの統計学者であるウィリアム・エドワーズ・デミング博士によって提唱されたビジネスメソッドです。日本では1950年代後から普及しました。
PDCAは多くの日本人が知っているビジネスサイクルの1つであり、日本の製造業が高品質だといわれるのは、PDCAの質の高さが影響しているといわれています。
PDCAを回す4ステップ
PDCAを回すためは「Plan」「Do」「Check」「Action」の4ステップを踏まなければなりません。Planは計画、Doは行動、Checkは評価、Actionは改善を意味します。
PDCAを活用すれば、生産管理などの業務を継続して改善でき、商品やサービスの品質向上につながるのです。ここでは、PDCAを回す4ステップについて詳しく解説します。
1.Plan
「Plan」は目標の設定と計画を立案するステップです。計画を立案にあたっては5W2Hを意識しましょう。
5W2Hは「Who(誰)」「When(いつ)」「Where(どこ)」「What(何)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」「How much(いくら)」を意味します。5W2Hを意識したうえで数値やデータを盛り込めば、具体性のある計画を立てられます。
2.Do
「Do」は「Plan」で立案した計画に従って、行動するステップです。計画の達成に向けて、中間の数値も意識しながら実践します。
ここで重要なのは、計画に沿って実行することです。計画から逸脱してしまうとPDCAを正しく行えないので注意してください。
また実行時には記録を付けておきましょう。実際に行ったことが有効だったかを記録しておけば、次の「Check」において効果的な検証が行えます。
3.Check
「Check」では、「Plan」で立案した計画どおりに「Do」で実行できたかをチェック、評価するステップです。計画は達成したかどうかも含めてチェックすることで、計画と結果を比較することで、計画の有効性について評価をしていきます。
実行時に残した記録を活用すれば、より客観的かつ精度の高い評価を下せるでしょう。
4.Action
「Action」では「Check」の評価結果をもとに、業務の改善を行うステップです。悪い点を洗い出して、どのように修正すべきかの改善案を出します。
最初の計画通りに進めていくか、または中止や修正をする必要があるのかも判断するのもこのステップです。「Action」で出た結論をもとに、次の「Plan」を立て、PDCAを回していきます。
OODAとPDCAの違い
OODA
Observe:観察 |
Orient:仮設 |
Decide:意思決定 |
Act:実行 |
PDCA
Plan:目標の設定と計画 |
Do:行動 |
Check:評価 |
Action:業務改善 |
OODAとPDCAの違いは、現場向きかどうかです。OODAは迅速な意思決定を行うためのフレームワークであり、先の見通せない中で目まぐるしく変化する現場に適しています。
状況に合わせて柔軟に対応できるため、適切な決断を迅速に下せるようになり、現場での問題解決能力もアップできるでしょう。一方、PDCAは工場などの生産性や品質の向上を高めるためのフレームワークです。
計画立案からスタートするため、状況が刻一刻と変化する現場では利用しづらいフレームワークといえるでしょう。
OODAが必要な3つの理由
OODAが必要な理由は「ITの発達」「ビジネス環境の変化」「PDCAだけでは対応できない」の3つです。ITの発達と普及によってビジネス環境や顧客ニーズは目まぐるしく変化しています。
昨今の目まぐるしく変化する環境に適応できるのが、OODAのメリットです。ここではOODAが必要な3つの理由を詳しく解説します。
1.ITの急激な発達
OODA必要になっている理由は、ITの急激な発達が影響しています。その代表的な存在であるスマホの普及によって、リアルタイムで顧客の意見を収集しやすくなりました。
その結果、マーケティングのスピードと精度は加速度的に増しているのが現状です。またAIの発達によって、過去のデータ分析や計画立案は人間がやる仕事ではなくなりつつあります。
その分、新しい価値を生み出すことに人間は集中できるようになりますが、競合他社に先を越されないためにも、状況を的確に捉えて迅速な意思決定を行わなければなりません。以上の点から勝機を逃さないようにするには、OODAが必須といえるでしょう。
2.ITによるビジネス環境の急激な変化
ITの急激な発達によってビジネス環境も呼応するかのように急激に変化しています。例えば、スマホ決済市場は競争激化の末にQR決済市場の古参だった「Origami Pay」ではなく、後から急速に市場シェアを伸ばした「PayPay」などが勝利しました。
小売業界でも、後発ながら急速に市場シェアを伸ばしたセブンイレブンが業界を斡旋しています。流動性が高く、環境の変化が激しい業界で勝つには、緻密な計画よりも機会を逃さず状況に応じた迅速な意思決定を行うことが大切です。
その機会を逃さず的確な意思決定を行うためには、OODAが欠かせません。
3.PDCAだけでは予測しづらい
今まで活用されてきたPDCAだけでは、ビジネスに関わる未来を予測しづらくなっている点も、OODAが必要な理由として挙げられます。計画を立てることからスタートするPDCAだけでは、急激なビジネス環境の変化に対応できません。
計画を立案している段階でニーズが合わなくなる可能性もあるでしょう。PDCAだけでは予測しづらいからこそ、急激なビジネス環境の変化に対応できるOODAが必要となります。
OODAとPDCAは使い分けが大切
前述のとおり、OODAとPDCAには大きな違いあり、両者をしっかりと理解したうえでの使い分けが大切です。OODAは新商品や新サービスの開発、新規事業の立ち上げなどを行う場合に適しています。
例えば、新規事業ための計画を立案したとしましょう。質の高い計画が出来上がっても、立案している間に市場や顧客ニーズが変化し、計画とニーズにズレが生じれば計画を立案した意味がありません。
計画どおりにサイクルを回すことが困難なほど流動性が高く、市場や顧客ニーズの変化に臨機応変に対応する必要がある場合には、OODAの活用が適しているのです。
反対にPDCAは、流動性が低く安定した市場において売上をアップさせたい場合や作業工程を継続して改善したい場合に適しています。売上目標の計画を立てたうえで、計画達成のために実際に行動して評価と評価にもとづく改善案を考えていく流れです。
効率よくビジネスを進めていくためにも、特徴をしっかりと理解して適切に使い分けましょう。
まとめ
目まぐるしく状況が変化する戦場で誕生したOODAは、相手の観察からスタートするフレームワークです。競合他社や市場、顧客ニーズを観察して都度調整できるため、状況に合った意思決定を下せます。
最初の計画どおり進めなくなるような流動性の高い業界や臨機応変な対応が求められる現場においては適したフレームワークであり、変化の激しい現代でOODAを活用できないのは致命的といっても過言ではありません。
とはいえ、PDCAが時代遅れというわけではありません。作業工程が決まっている状態での業務効率化や安定した市場での売上アップを目指す場合には、計画を立てることからスタートするPDCAの方が適しているからです。
状況に応じてOODAとPDCAは使い分けて、精度の高いビジネスを行っていきましょう。
フレームワーク多すぎ問題…
この記事を描いたひと
企業のWeb担当者と制作会社の想いをつなげるメディア「untenna」の編集部。