提供しているサービスのブランド価値は認知されているけど、実際の現場スタッフはその価値を理解していない。そんなことありませんか。
消費者に対するブランド価値の構築同様、スタッフがブランドを意識して働くことは組織力を向上させる上で非常に重要なポイントです。スタッフの言動ひとつでブランド評価は良くも悪くもなります。
スタッフ一人ひとりがしっかりとブランド価値を理解してもらうために実施するのが、インナーブランディングです。実践している企業とそうでない企業とではブランディングの質や効果が大きく異なってきます。ブランディング活動に取り組んでいるのにあまり効果が出ない・・・と課題を抱えている企業は、一度インナーブランディングを見直してみてはいかがでしょうか。
今実施すべきインナーブランディングとは一体何なのかを説明していきたいと思います。
インナーブランディングとは
顧客や社外へ向けて、自社サービスの特色や魅力を訴求するアウターブランディングに対し、企業の内部から社員に向けて自社のブランド価値を浸透させるインナーブランディング。自社ブランドを社員・アルバイト・役員、全スタッフに浸透させ理解を得る啓蒙活動こそインナーブランディングです。
しかしインナーブランディングは、収益に直結するものではなく、上層部や現場から協力を得ることが難しいケースも少なくありません。実際のところ中小企業の多くは、外へのブランディングとの整合性が取れない、社内に広報部門がなく浸透させることが難しい、代表がワンマンのため意見が現場に上手く伝わらない、など自社ブランドの構築には様々な悩みが存在します。(社内向けにブランドを構築し、自己満足で終わるケースも…)
近年では、スタッフの不適切な行動がSNSに拡散され、経営が傾く事案も増えてきました。採用においても入社後、社風が面接時に聞いていた話と違うとミスマッチが起こったり、事故を未然に防ぐためにもインナーブランディングに取り組む中小企業も増えてきています。社内の意識変革を行うことで、スタッフのモチベーションUP・サービス品質向上・優秀な人材の獲得、企業の成長に繋がるのです。
インナーブランディングの効果・特徴
意識共有
インナーブランディングを行うことは「社内の意識をひとつにする」ことに尽きます。コーポレートロゴ・企業理念やサービスのキャッチコピーなど、ビジュアルな側面からブランド価値を構築していくことも可能ですが、スタッフ自身がその真意を理解していなければ、会社としての歩調はひとつにはまとまりません。
ブランド価値を理解することで、突発的な事案に対しても「○○らしい」対応をとることができます。某有名テーマパークや一流ホテルでのスタッフ対応でも同じようなことを言えるでしょう。
スタッフ自身が「自分たちの言動が自社ブランドを構築する」と認識しているのです。自社ブランドをスタッフ自身がファンとなり、誇りを持って働くことで、顧客にもブランドの魅力が伝わります。
サービス品質の向上
スタッフの意識変革が行われると、次第にサービス品質の向上にも繋がります。
会社としてのビジョンは何か?自社の強みは?サービスの最大の売りは?
スタッフが自社のスタンスを身体で理解することで、会社の目指す方向性とスタッフの意識がシンクロし、これまでにない期待値を超えるサービス提供が可能になります。
若手社員・中途採用社員の離職率低減
最近では採用強化に向け、インナーブランディングに取り組む企業も多くなってきました。売り手市場の就活状況において、人材の採用は企業活動を支える上でも非常に重要になっています。
採用広告やエージェントを駆使し、優秀な人材の獲得に企業の採用担当者は全力で自社のブランド価値を伝えます。しかし入社後、実際の現場とブランド価値には相違点も多く、採用にミスマッチが起こってしまうケースも少なくありません。
「人によって言っていることが違う」という一貫性を欠いた状態にならないためにも、ブレなく発信することが確かな採用ブランドに繋がっていきます。
インナーブランディングの施策プロセス
現状分析
現場の声を抽出し、スタッフ一人ひとりがどのような思いで業務に取り組んでいるのか現状を分析していきます。
顧客からアンケートを取り他者認識を深めることや、社内行事後に意見を聴衆するなど、客観的に自社のことを理解していきます。
自社ブランドの理念構築・策定
会社の方向性を踏まえ、どのようなブランドを構築すべきか、を考えます。提供するサービスや会社の未来を具体化するようなブランドイメージを思い描きます。全体の思考整理を会社案内やWEBサイトのリニューアルに合わせて行うことも多く、社名変更に合わせてインナーブランディングを行う企業も少なくありません。
行動指針・ブランド価値浸透までの計画
ブランドが定着するまでの具体的なイメージを想定します。既存スタッフだけではなく、これから入社する未来のスタッフにもわかりやすく・伝わりやすい行動指針を決め、ブランドが浸透するまでの中長期的な計画をつくりあげます。
ブランド浸透施策の企画・実行
ブランド構築には根気強くPDCAを回すことが重要です。サービスの成長やブランドの構築状況・スタッフの変動に合わせて、施策も随時変更していく必要があります。場合によっては、改めて「現状分析」を行うことで全体の方向性を確認し、自社ブランドの構築軌道を修正していきます。
研修やワークショップの実施
研修やワークショップを行うことは「自社のブランドについて考える時間」にあたります。ブランドを理解することで、ブランド価値を高めるため“自分にはどのようなことが出来るか”を考えることが可能になります。
インナーブランディングの注意点
スタッフの個性を尊重する
「社内のブランド価値をひとつに」と言っても、スタッフにはそれぞれ個性があり、多様です。それぞれ与えられた業務も違えば、仕事に対する考え方や価値観、もちろん働き方も違います。唐突に「明日からこの方針で進む!」と旗を振りかざしても、現状に問題点を見出だせないスタッフには煩わしい方針でしかありません。
そのためにも様々なスタッフと向き合い、それぞれがどんな思いでどのように働いているのか、まずは知ることが重要になります。異なった発言や行動にも、共通する背景があるかもしれません。個人の個性を尊重し、所属や肩書に左右されないように実施するように注意しましょう。
事例はあくまで一例、自社に見合った手法を
インナーブランディングの難しいところは「正攻法がない」ところ。実施する会社が違えば、提供するサービスやつくりあげる人も違います。そのため、業種に即している事例であれば成功するかというと、そうではなく、その企業ならではの歴史や文化に基づいた施策があります。
反対に社内での取り組みが多いことから、企業の大小や業種に左右されず参考にしやすいメリットもあります。まずは自社のこれまでの情報を元に、文化やDNAに合った手法を探してみましょう。
効果の可視化ができない
インナーブランディングを始めるにあたり、問題点になるのは「いつ効果が出るのか?」。
中小企業では業務を兼任して行うことも多く、インナーブランディングのような社内向けの施策に時間を省くことが難しくなります。しかし人の気持ちや行動は、簡単に変わるものではありません。そのためにも経営陣の理解を得て、取り組みを継続するためにも、成果を可視化するKPIの設定を行うのもひとつの手法です。
ただし、KPIを数値や広告換算などにしてしまうことが、必ずしも正解ではありません。消費者向けのブランディングと同様、インナーブランディングも効果を実感するには、時間がかかることを心に留めましょう。
まとめ:経営者自ら発信することが最善策
インナーブランディングは「経営とスタッフの接点を最適化」しなければなりません。
中小企業の場合「時間がない」「自分の仕事ではない」と協力・賛同してくれる人が居ないと悩む方も多いでしょう。
部門によって言ってることが違う、とスタッフが不信感を持ってしまわないためにも、各部門の管理職と協力関係を構築し、ともにブランドを意識していくことが重要になります。
そのためにも経営者自らビジョンをスタッフに伝えることがインナーブランディングには最善策です。自らの言葉で伝えることで、スタッフの自社に対する認識も深まります。
中長期的な取り組みが必要とされるインナーブランディングだからこそ、担当者任せではなく経営者を含めた運用体制を築き上げ、より強固なブランド価値を構築してきましょう。
この記事を描いたひと
企業のWeb担当者と制作会社の想いをつなげるメディア「untenna」の編集部。