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行動経済学でUXをデザインしよう!基礎知識や活用方法を紹介

2021.07.06 Web制作
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モノからコトへと市場の価値が変化する中、近年では「UX(ユーザーエクスペリエンス)」「行動経済学」という言葉を耳にする機会が増えました。一方、その意味や重要性の理解が低く、ビジネスに活用できていない企業も多いのではないでしょうか。

本記事では、UXや行動経済学の基礎知識、UXに活用できる心理学的手法について紹介します。

UXとは?

マーケティングにおいてUXの重要性は、年々高まっています。同様にUIについて話題に上がることもあるでしょう。まずは、UXの意味やUIとの違いを解説します。

UXは「人がモノやサービスから得る体験や経験

UXとは「User Experience(ユーザーエクスペリエンス)」の略です。Experienceは体験や経験を意味し、UXは「人がモノやサービスを通して得られる体験」を表します。

WEBサイトを例とした場合、

  • デザインが美しい
  • 文字(フォント)が読みやすい
  • 情報が検索しやすい
  • 注文した商品がすぐに届いた
  • スタッフの対応が丁寧

というようなモノやサービスを利用する行動の中で、ユーザーが感じることすべてを総称する言葉がUXなのです。

UIとUXの違いは曖昧

UIは「User Interface(ユーザーインターフェース)」の略で、Interfaceは境界面や接点を意味します。WEBサイトの例では、画面デザインやクリックボタンなど「ユーザーが目にふれるものや操作するものすべて」がUIです。

UIとUXは結び付けて考えることが多く、境界線が曖昧のため混合して扱われることもあるでしょう。ただし、UXはUIを改善させるためのひとつの要素です。UIの改善によってUXにも大きな影響をもたらす相乗効果の関係にあります。

行動経済学とは?

シカゴ大学のリチャード・セイラー教授は、2017年にノーベル経済学賞を受賞しました。行動経済学の研究者では、2002年のプリンストン大学のダニエル・カーネマン教授以来、2人目の受賞です。

それをきっかけに改めて行動経済学が注目されています。ここでは、行動経済学について詳しく見ていきましょう。

行動経済学は現実的な経済活動に着目

一般的な経済学は「人は常に自分の利益を最大化するために合理的な意思決定をする」という前提において行動モデルを追求しています。しかし、経済的合理性のみですべての人が同じように意思決定をしているかというと、そうではありません。

「少し値段は高いけれど、おしゃれなカフェでスイーツを楽しむ」「安いスーパーまで足を運ぶのが面倒だから、目の前の自動販売機で飲み物を買う」など、人は一見して合理的ではない行動もとっているのです。

行動経済学は、経済学に感情やバイアス、人間の非合理的行動などの心理学的要素を組み合わせて現実的な経済活動に着目しています。

行動経済学では「ナッジ」が有名

行動経済学では、行動科学の知見から人がより良い選択ができるように自然な行動変容を促すことを「Nudge(ナッジ)」と言います。ナッジとは「肘で小突く」「そっと後押しする」という意味です。

セイラー教授は、ナッジについて「選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャーのあらゆる要素」と定義しています。人間の意思決定にはクセがあり、さまざまな場面でナッジに行動を促されています。

例えば、お店の商品陳列です。

どこを最もよく見ていて商品を手にする確率が高いかということは、心理学や行動科学で明らかになっています。利用するユーザーにとってより良い商品陳列がされていれば、ナッジにあたるでしょう。

一方、ナッジを悪用することを「Sludge(スラッジ)」と言います。お店側の私利私欲のために商品陳列し、無理やり購買促進をした場合はスラッジとなるでしょう。行動経済学の知識は、人のために役立つことで価値となります。ナッジの利用には、本来の目的を見失わない様に注意が必要です。

なぜUXに行動経済学が必要なのか

UXを設計するにはユーザーに共感し、伝わる仕組みを考えることが重要になります。ユーザーに製品やサービスを継続して使用する動機付けを提供するため、信頼と一貫性のある体験を備えた主要な欲求を満たす必要があるのです。

UXは、心理学と親密な関係にある行動経済学から学ぶこともできます。ほとんどの業界が成熟している現代において他社との差別化が図りづらい中、「経済的合理性ではなく、人が意思決定する際の環境をデザインして自発的な行動変容を促す」という行動経済学の理論はUXに取り入れられるでしょう。

UXに活用できる6つの行動経済学

続いて、UXに活用できる行動経済学の理論を6つ紹介します。

意思決定や判断に影響する「アンカリング効果」

意思決定や判断に影響する「アンカリング効果」

アンカリング効果とは、最初に印象的な数値や情報を与えることにより、その後の意思決定に影響を及ぼす効果のことです。「通常価格から10%オフの900円で販売」といった広告でよく見かける値下げ表示は、アンカリング効果を狙って使用されています。

通常価格から割引されているという情報をもとに、商品の値段が安くてお得だとユーザーは認識するのです。ユーザーが価格相場を知らない商品やサービスほど、値下げ広告の効果が期待できるでしょう。

また、商品価格の前に購入者数やお気に入り登録者数などの大きな数字を見せると、より多くのものを購入する傾向も効果にあります。

全体評価を決める「ピーク・エンドの法則

全体評価を決める「ピーク・エンドの法則」

ピーク・エンドの法則とは、体験の途中(ピーク)と、最後の体験(エンド)の記憶で人は全体評価を決定するというものです。スウェーデン家具販売店のIKEA(イケア)では、この法則を上手に利用しています。

IKEAがユーザー体験の中で重視している部分は「安い値段で商品を購入する」ピーク時と「買い物を終えた後にお買い得な軽食を食べる」終了時です。それによって顧客は全体的に良い体験だったという印象が記憶に残り、リピートへと繋がっていきます。

UX設計に活用する場合は、ピーク時と終了時に良い印象の記憶に残りやすいユーザー体験を提供すると他社と差別化され、全体評価の高いプロダクト・サービスだと認識されるでしょう。

損失を回避するための「プロスペクト理論

損失を回避するための「プロスペクト理論」

不確実性の条件によって人がどのように意思決定を行なうのかをモデル化したものをプロスペクト理論(損失回避性)と言います。人は手に入れることより失うことに過大評価しやすく、損失を回避する行動をとる傾向を持っているのです。

分かりやすい事例では「先着○名様まで」や「○個限り」のように期間や個数を限定する方法でしょう。早めに行動しなければ損失を被る、とユーザーに思わせることにより商品購入に繋げることができます。

ゴールに導く「エンダウド・プログレス効果

ゴールに導く「エンダウド・プログレス効果」

エンダウド・プログレス効果とは、人はゴールへの前進を感じるとモチベーションが向上するという心理効果です。ポイントカードを使用した有名な実験があります。

最初からスタンプが2つ押してある10ポイント集めるカードを貰ったAグループは、スタンプを押してない8ポイント集めるカードを貰ったBグループよりも達成度が高いのです。集めるポイント数は同じでも、ゴールまで視覚化された進捗がモチベーションに繋がったことが理由に挙げられるでしょう。

商品を選ばれやすくする「おとり効果

商品を選ばれやすくする「おとり効果」

片方の選択肢よりも見劣りする選択肢(おとり)を提示することで、ユーザーの意思決定を変化させる心理をおとり効果と言います。

  • 商品A:1,200円
  • 商品B:800円
  • 商品C:500円

上記のように商品を用意した場合、多くの人が2番目の商品Bを選択するでしょう。商品Cは割高、商品Aは質が低いものであるように感じ、結果として中間の商品Bが最も魅力的に見えるのです。

この手法は一番売りたい商品の前後におとりを入れると、希望商品に手を取ってもらえるように仕向けることができます。ただし、ユーザーには損失回避の心理があるため、最適な価値と価格を提供できるように設計することが大切です。

今すぐに欲しくなる「現在志向バイアス」

今すぐに欲しくなる「現在志向バイアス」

現在志向バイアスは、未来の大きな利益よりも目先の小さな利益を優先してしまう心理を指します。時間軸における選好の逆転現象が先延ばしの心理を生み出すのです。

「買った当日から利用可能」「翌日には効果が現れます」とすぐに利益が得られる強みをアピールすることで、現在志向バイアスの効果が高まります。

人間の感情に寄うUXデザインが重要

これからの時代は、よりユーザー目線のUXデザインが重要となります。そのためには、ペルソナを細かく設定し目的を持ったUXを考えていくことが大切です。

人間の心理的な側面から知識を深めるのもより良い効果が期待できます。行動経済学の理論を活用し、ユーザーの感情に寄り添うUXデザインを製品やサービスを通して提供していきましょう。

体験もデザインする時代なのね

この記事を描いたひと

untenna編集部

企業のWeb担当者と制作会社の想いをつなげるメディア「untenna」の編集部。

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