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Webサイト制作・Webデザインにまつわる「著作権」とは

2021.07.26 Web制作
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Webデザインは、インターネットを大いに活用している今の社会では欠かせない仕事の1つです。ただし、Webデザインは「デザイン」である以上、著作権法で守られた「著作物」であることには注意しなくてはなりません。

この記事は、Webサイト制作・Webデザインの際に著作権トラブルにならないよう気をつけたいポイントを解説します。

著作権とは?

著作権は映像作品や音楽、ロゴを含むさまざまな制作物に認められる権利です。ぼんやりと「それを作った人の権利」と考えがちですが、将来著作権にまつわるトラブルを避けるためにも、制作者は「著作権」について詳しく正確に知る必要があるでしょう。

ここでは、Webデザインを含めた著作物の、著作者が持つ権利としての著作権について詳しく解説します。

著作物における著作者の正当な権利

私たちの生活に欠かせない映像や音楽、小説など著作者の表現した「著作物」にまつわるさまざまな権利が「著作権」です。

著作物に費やされた著作者の努力や苦労が正当な評価に基づいて報われることは、日本の文化全体の発展に寄与すると考えられています。大きく「著作者人格権」「著作権(財産権)」に分けて保護されるべき権利を示しています。

著作者の人格を保護する著作者人格権

著作者人格権とは、著作物にまつわる著作者の人格を保護する権利で、次のように分類できます。

  • 氏名表示権
    著作物を公開するときの、著作者名の表示・非表示、また実名・変名(ペンネームや芸名のような実名でない名前)を決める権利
  • 公表権
    公表していない著作物を、どのように、いつ公開するか、公開するかどうかを決める権利
  • 同一性保持権
    著作物が、著作者の意思に反するような変更・改変が行われることを禁止する権利

著作者人格権は、著作者が生きている限り保護されますが、亡くなった後についても侵害してはならないことが明確に定められています。著作者という「人間」に大きな影響を与えるため、取扱には十分な配慮が必要です。

他人に譲渡・相続できる著作権(財産権)

著作者の財産としての意味合いを持つ著作権には、著作物の利用にまつわるさまざまな権利が細かく定められています。どれも、利用の前に著作者の許可が必要とする、まさしく著作者に認められた権利です。

  • 公衆送信権
    著作物をテレビ・ラジオ・有線放送やインターネットを使って公衆送信する権利(アクセスごとに送信する「送信可能化権」も含む)
  • 複製権
    著作物を複製する権利
  • 上映権
    映画・写真・絵画などの著作物を、公に上映する権利
  • 上演権・演奏権
    音楽や演劇のような、公に著作物を上演・演奏する権利(CDなどを使う場合も含む)
  • 口述権
    小説や詩などの言語による著作物を、口述で公に伝える権利
  • 翻訳権・翻案権など
    著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化、その他翻案する権利
  • 展示権
    美術や、まだ発行されていない写真を、その原作品により公に展示する権利
  • 頒布権
    公に上映することを目的として作られた映画の著作物を販売したり貸したりする権利
  • 貸与権
    映画以外の著作物の複製物を貸与によって公に提供する権利
  • 譲渡権
    映画以外の著作物またはその複製物を多くの人に販売・貸し出しなどの方法で提供する権利
  • 二次的著作物の利用権
    著作物から創られた二次的著作物を利用する権利

財産権としての著作権は著作物の「取扱」にまつわる権利であり、権利者が金銭や資産と同様、譲渡や相続ができる権利です。著作者は譲渡を求められた場合、著作物が将来どのように取り扱われる可能性があるか、十分に検討する必要があるでしょう。

日本で著作権は無方式主義が適用される

日本では著作権は、著作物が生み出された時点で自動的に発生し、そのとき他のなにかしらの手続きや申請などを必要としない「無方式主義」が適用されます。これは日本に限らず、1886年にスイスで制定された「ベルヌ条約」に調印した世界150カ国以上が採用する方式です。

著作権法では「著作権を登録する制度」も定められています。これは著作権を、著作物の公表や譲渡といった権利そのものに起こった事実を登録することで法律事実として公示し、取引の安全性を確保するための制度です。

登録制度は著作権の「発生」を証明する制度ではありませんが、著作物の公表や著作権の譲渡といった「事実を証明するための制度」であり、著作権をよりスムーズに取り扱い、明確にするための制度だといえます。

著作物を合法に引用するための7つの要件

では、著作物は必ず著作者の許可を取らなければ引用できないのかというと、そうではありません。ただしそのためには、次のような要件を満たすことが前提とされています。

  • 引用する他人の著作物が既に公表されていること
  • 他人の著作物を引用する必然性があること
  • 自分の著作物と引用部分とが明確に区別されていること
  • 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確なこと(自分の著作物が「主」)
  • 出典元が明示されていること
  • 著作物が原則として改変されておらず、原型を保持していること(改変する場合はその旨明示し、引用された文章や図表などがそれとわかるようにすること)
  • 引用する著作物の著作者の名誉を傷つけたり意に反する使用をしたりしないこと

Webデザインにおける著作権

Webデザインにおける著作権

ここからは、Webデザインに関連する著作権と素材にまつわるさまざまな権利について解説します。Webデザインには実に多様なコンテンツの集合体なので、それぞれの権利についてもしっかり理解しておきたいものです。

ただし、著作権の考え方からすれば、Webデザインの著作権を持っているのが誰かは明らかです。

Webデザインの著作権を持つのは「制作者」

Webデザインの著作権は、Webデザインの制作者が持ちます。自分で制作すれば自分が、外注したWebデザインであれば外注先が著作者となり、著作権が発生するのは制作した時点です。

もし自分以外が著作者であれば、著作権法に則ってWebデザインに含まれるコンテンツを勝手に改変したり、二次利用したりすることはできません。Webデザインの性質上、このような事態が起こる可能性があるのなら、事前に著作権譲渡契約を交わしたり、著作者人格権の不行使条項を定めたりといった手続きを取る必要があります。

使っている写真やイラストなど素材の持つ権利

Webデザインは次に代表されるさまざまなコンテンツで構成されています。

  • Web全体のデザインやテンプレート
  • ソースコード
  • キャッチコピー
  • 文章
  • 画像や動画
  • 音声や音楽

コンテンツそれぞれ著作権があり著作者がいるのであれば、慎重に取り扱うことが重要です。コンテンツによっては著作権以外の権利が発生するため、著作権とは別の意味で注意する必要もあります。

Webサイトや書籍の文章の著作権

Webサイトに情報を求めるユーザーの多くは内容をわかりやすく教えてくれる「文章」を重視します。制作時に感銘を受けた書籍や、わかりやすく解説したWebサイトの文章をそのまま引用したくなるかもしれませんが、これは著作権を侵害する行為です。

引用したい場合は、元の著作物を参考に「自分の言葉で文章を書く」、または「引用元を明記する」ようにしましょう。

人物の写真の肖像権

Webサイトを作る上では目を引く「アイキャッチ」となる画像は集客の大きな要素になり得ます。しかし、インターネット上の画像やイラストを安易に使ってしまうと著作権を侵害してしまう可能性があります。

引用するのであれば、素材販売サイトで購入するか権利者から許可を取りましょう。可能なら自分で制作するのもよい方法です。

また、有名な人物や動物の写真を勝手に使うと、肖像権を侵害する可能性もあります。著作権と同様、権利者からの許可が必要です。

キャラクターやロゴの商標権

Webデザインにおいては、サイトの配色や形式も特徴を表す大きな要素です。たとえ依頼者から「有名ブランドの〇〇風のWebデザインにしてほしい」と依頼されたとしても、丸ごとコピーすることや一般に「似すぎている」とされるデザインは著作権だけでなく商標権を侵害することになります。

また、企業や団体のキャラクターやロゴも、商標登録されているのが一般的です。安易に利用しないよう、注意しましょう。

フリー素材でも著作権を侵害することがある

Webサイトでよく見かける「フリー素材」にも、注意しなくてはならない場合があります。中には「商用利用可」「個人利用可」といった利用にまつわる制限がある場合があるからです。ここでいうフリーとは、著作権フリーでないということを知っておく必要があります。

例えば、個人利用可だけの素材であれば商用利用ができません。たとえ個人サイトのWebデザインでも、世界中に公開される「商用利用」となるため、著作権侵害とみなされます。

ここでいう個人利用とは、個人でパソコンの壁紙にする、他人に公開せず自分だけで楽しむケースです。世界中に公開することになるWebデザインには使うことはできません。

Webデザインで著作権が認められない場合

Webデザインに著作権があるとはいっても、制作したからといってその何もかもに認められるわけではありません。さまざまな素材が用いられるWebデザインだからこそ、それぞれの著作権には十分配慮し、慎重に検討する必要があります。

ここではWebデザインに用いられる素材やその組み合わせ、配置などにおいて著作権が認められる場合とそうでない場合について解説します。

Webデザインのレイアウト

著作物が著作権法によって「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」(第一節・第二条)とされている以上、Webデザインも著作物として認められるはずです。

しかし、Webデザインのうちレイアウトや色(配色)は、Webデザインでなくても誰もが利用できるあくまで「創作を表現する手段」であって「創作的に表現したもの」ではありません。他のWebデザインを丸ごとコピーしてしまえば明らかな著作権侵害とみなされても仕方ありませんが、似たレイアウト・配色という程度なら著作権侵害とは認められません。

提供された素材を使った仕上げやデザイン

平成24年1月12日の大阪地方裁判所の判例によると、提供された素材を使ったWebデザインも、次のような理由から著作権が認められていません。この裁判の原告はWebデザイン制作者、被告は依頼したWeb制作会社です。

  • Webデザインに使った素材はWeb制作会社が提供した
  • 制作者はデザイン、レイアウト、配色、仕上げの各作業にすぎない

判決によりこのWebデザインは、あくまでも提供された素材をまとめてデザインし、仕上げたものであるとされました。この例からわかる通りWebデザインは、画像や文章などと違い、レイアウトの延長とされがちだということがわかります。

著作権をめぐる制作者と依頼者の立場

著作権をめぐる制作者と依頼者の立場

Webデザインにまつわる著作権が問題になる場面では、制作者と制作を依頼した依頼者がそれぞれの立場が前提となっていることにも注意が必要です。権利にまつわる訴訟では、互いがそれぞれ主張し合っていても長期化するばかりで解決には時間がかかります。

このような問題は、発生しないようあらかじめ取り決めを交わしておくことが有効です。ここでは制作者と依頼者のそれぞれの立場について考えてみましょう。

制作者は著作権を正当に主張できる

著作権が認められない場合もあるとはいえ、Webデザインは立派な著作物です。制作者には著作権がありますが、中には依頼者がそれを正しく認知せずに依頼している可能性があります。

残念ながら「Webデザインの納品=関連したものはなんでももらえる」と誤解している場合もあるため、制作者は権利を守るためにも先に「著作権がある」ことを明確に伝えておくことが大切です。

なんとなく流れで「大丈夫なはずだ」と安易に約束してしまうと、最後に後悔することにもなりかねません。過度にこだわって主張するのは避けるべきですが、今後の報酬にも影響する可能性があります。制作者の著作権については、あらかじめ明確にしておく必要があるでしょう。

依頼者はスポンサーとしての立場を利用

制作者が著作権を明確にしたり、主張したりするのがためらわれるのは、「依頼者から仕事をもらう」、つまり自分のスポンサーであることを意識するからでしょう。こちらの言い分を主張するあまり受注できず、報酬を得られなくなることを恐れるためです。

しかし、仕事は継続するほど、特別な理由がない限り「前例に則って」続きます。著作権が侵害されたまま二次利用されればWebデザインだけでなく「ブランディング素材のすべて」を渡すことになり、本来手に入れるはずの報酬もゼロです。

制作者にとっても依頼者にとっても、Webデザイン制作は「ビジネス」です。どちらかが一方的に利益を得るのではなく、互いが正当な利益を得る健全な仕組みである必要があります。依頼者の立場に配慮しながらも、著作権については明確にしておきたいものです。

著作権を含めて合意することが大切

ビジネスでは、売る人は「できるだけ高く売りたい」買う人は「できるだけ安く買いたい」と思うのはごく自然なことといえます。しかしそれはあくまで、著作権という法律に則っているのが前提。そのためWebデザイン制作においても制作にまつわる形式や納期だけでなく、著作権についてあらかじめ合意しておくことが大切です。

著作権トラブルを避けるには?

Webデザインに限らず著作権を正しく理解し取り扱うことは、Webデザインそのものの報酬、つまり価格の異常な低下をさせないためにも非常に重要です。たった1人の行動が、依頼人の「他の人はもっと安くやってくれた」といった誤った前例につながり、Webデザインの価値や業界が不健全を助長してしまうかもしれません。

大切なのは、およそ次の3点に集約されるでしょう。

  • 著作権を正しく主張し、誤った譲歩をしない
  • 著作権を重要な要素として正しく理解する
  • 著作権について正しく合意できない依頼者とは取引を諦めることも辞さない

依頼者の無茶な要求を引き受けたとしても、本来の健全な取引でない以上長続きするはずはありません。かえってWebデザインという仕事の陳腐化につながるかもしれないことを考えれば、制作者が依頼者を「見定める」ことも重要な要件の1つといえます。

まとめ

今後もインターネットを利用したビジネスは増え、多様になっていくと考えられます。そのときユーザーにとっての入り口となるWebデザイン制作のニーズも高まるでしょう。制作者も依頼者も増え、業界として大きく成長していくはずです。

そこで重要になるのが、Webデザインは著作物であること、著作権は制作者に認められることを、制作者・依頼者ともに理解し合意してビジネスにあたることだといえます。業界の将来のため、著作権に則った取引に努めましょう。

出典先

著作権|文化庁:https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/index.html
写真肖像権と著作権|公益社団法人 日本写真家協会:https://www.jps.gr.jp/rights-2/
公益社団法人 著作権情報センター:https://www.cric.or.jp/index.html
音楽著作権とは|JASRAC:https://www.jasrac.or.jp/copyright/index.html
日本書籍出版協会:https://www.jbpa.or.jp/copyright.html
東京都知的財産総合センター:https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/manual/chosaku/rmepal000001uykk-att/chosakumanual.pdf

“正しく理解する”のが大切ってことだね

この記事を描いたひと

untenna編集部

企業のWeb担当者と制作会社の想いをつなげるメディア「untenna」の編集部。

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