顧客の成功体験づくりをする「カスタマーサクセス」。カスタマーサポートと何が違う
カスタマーサクセスとは「顧客の成功」という言葉で説明されることが非常に多いです。しかし、顧客の成功と言われてもピンと来ない方もいらっしゃるでしょう。
今回はカスタマーサクセスとは何か。カスタマーサクセスとしての役割はどんなものなのか。そしてカスタマーサポートとの違いについてご説明します。
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスは「顧客の成功」を促すためのプロセスや仕組みなどを意味すると同時に、カスタマーサクセスという「立場・役職・役割」である人を意味する言葉でもあります。まずはカスタマーサクセスという言葉が2種類の意味で使われていることを理解しておきましょう。
カスタマーサクセスにおける「顧客の成功」をほんの少し噛み砕いてみると「顧客が望んでいる結果を出す」という言葉が一番近いと言えます。顧客が望んでいる結果(KGI:Key Goal Indicator)を得るために、具体的にどんなこと(KPI:Key Performance Indicator)をすれば良いのかを考えて実際に行動する、もしくは提案するのがプロセスや仕組みとしてのカスタマーサクセスです。
大学受験で例えると、受験生(顧客)が第一志望の大学に合格(KGI)するために、どのような勉強(KPI)をするべきかを、学校・予備校等で授業する先生・講師の人が、立場・役職・役割としてのカスタマーサクセスになります。
カスタマーサクセスのメリット
BtoBにおけるカスタマーサクセスのメリットは具体的に結果を出せるようになることです。具体的な結果とは「売上」や「実績」など数字で表せるものも含みます。また、「顧客の成功」として顧客が悩んでいる現時点での不満や、不足している事柄、問題点などの解消も挙げられます。
普段の作業や業務、営業活動や経理、人事など、社内的な部分における顧客自身の満足度を向上できることも、ある意味カスタマーサクセスのメリットと言えるでしょう。
BtoCにおけるカスタマーサクセスのメリットは最終的な顧客=ユーザーが満足することでリピーターやファン、サービスの継続的な利用など、やはり具体的に数字や金額に表れる部分にあります。一人一人のユーザーの不満をしっかりと解消、もしくは不満や問題が出ないようなアプローチをすることで、結果として長期に渡り収益を生むことが可能となるからです。
もちろん、ユーザーが求める機能や実装を全て受け入れることはできません。サービスや商品を提供する側として、ユーザーとの折衷案となる部分を模索するのもカスタマーサクセスの役割と言えるからです。
カスタマーサクセスのデメリット
BtoB、BtoCに限らず、カスタマーサクセスのデメリットは時間や人的資源、労力や費用を伴う「行動:アクション」を起こしたのに、思ったような結果が得られない可能性がある点です。
例えば、ダイエットで理想とする体重がKGIだとして、食事制限や運動などのKPIを定めて時間や体力を浪費して行動したのに、理想とする体重にならないような状況と似ています。カスタマーサクセスの「顧客の成功」という部分の捉え方やアプローチする方法は無限とも言えるので、ある意味何が正解かわからないまま、話が進んでしまうこともあります。
同時に、同じ経過やプロセスを辿っても、同じ結果になるとは限らないというごく当たり前の事から目を背けてしまい、盲信した結果、時間とお金ばかりを浪費してしまうという結果も考えられるでしょう。
カスタマーサクセスでは「顧客が本当に求めているもの」を考えつつ「顧客が求めていないもの」を直視することでデメリットを回避しやすくなると言えます。
立場・役職・役割としてのカスタマーサクセス
カスタマーサクセスとして立場や役職、役割なりたい、または任命されることもあるでしょう。
実際にカスタマーサクセスが何をするのか、どんなスキルが必要で、どんな仕事内容なのかをチェックしておきましょう。
カスタマーサクセスに必要なスキルや能力
- コミュニケーションスキル
- 情報分析や問題発見能力
- 対内外的な調整能力
- 問題解決や企画・発想する力
- 具体的な数字や結果を出す力
カスタマーサクセスに必要なスキルは主に上記の5つが挙げられます。
顧客の成功とは何か。実は顧客自体が知らないことの方が多いです。もちろん、具体的な売上、実績などの数字の向上であればわかりやすいですが、問題点や不満点など不足している部分は気が付きにくい、または改善しにくい部分であることが多いからです。
また、サービスを形成するチームや組織の中にいると見えない部分、または顧客側の気持ちがわからないと見えてこない部分などに問題点や不満点が存在することもあります。
カスタマーサクセスは「問題や不満を発見する能力」と同時に「問題を解決する力」が求められると言えるでしょう。
カスタマーサクセスの仕事内容
- 顧客への提案や導入支援
- 継続利用や併用の提案
- 問題や不満を事前に防ぐ施策
カスタマーサクセスの仕事内容として、導入することで顧客にどのようなメリットがあり、継続する価値があるのか。またはその他のオプションを付ける意味やメリットの提示などが挙げられます。また、明らかに問題や不満が出てしまうような手順・プロセスや情報の開示が含まれる場合に事前に防ぐようなことも行います。
アップセル(顧客単価の向上)やクロスセル(商品の合わせ買い・オプション併用)などの施策や企画もカスタマーサクセスの仕事です。
BtoCとBtoBでカスタマーサービスに対する捉え方や見え方が違う
注意点としては、BtoBとBtoCではカスタマーサクセスの捉え方や見え方の違いがある点です。
BtoCとして、例えばファーストフードなどでプレミアムバーガーを売る(アップセル)やポテトやジュースを合わせ買い(クロスセル)してもらうための施策を考えるのは、ファーストフードを経営する側のカスタマーサクセス担当者と言えます。
BtoBとして、ビジネスを行っている企業に対し、売上アップや実績増加に効果的なマーケティングツール導入や提案を行うような「カスタマーサクセス」そのものをサービスとし、提供する企業や組織も存在するので、混同しないよう注意しましょう。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスの説明を見ていると、カスタマーサポートも似たようなことしているのではないかと感じる方もいらっしゃるでしょう。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは「顧客満足度の向上」という点では同じと言えますが、アプローチする方法やプロセスに違いがあります。どのような違いがあるのかチェックしましょう。
カスタマーサポートは「受動的」
カスタマーサポートは顧客からのアクションによって、行動を起こすのが基本形と言えます。
例えば、商品を購入した顧客からのクレーム、使い方の問い合わせ、壊れてしまった場合の対応など、何かしらのトラブルが起きたことによるアクションに対応することが非常に多いです。逆に言えば、クレームや問い合わせをしない顧客であれば、リピーターやファンになることも、継続的に商品を購入することもなくなり、自然消滅的に売上が減っていく形となります。
お金を払ったのに、トラブルのあった商品やサービスに対し、わざわざ問い合わせやクレームをするという「労力」を使ってくれる顧客はそう多いわけではありません。
カスタマーサポートは後手、受動的であり、潜在的な顧客の不満や問題点が可視化しにくいという弱点があります。
カスタマーサクセスは「能動的」
カスタマーサクセスは先手、能動的に顧客へアプローチするのが基本形です。
例えば、顧客の抱えている問題点や不満点を分析しておき、どのようなサービスやオプションが効果的であり、どのようなメリットやデメリットがあるのか提示する。同時に既知の問題点や不満を即座に解決し、少なくとも解決できるような手順や段階を組む。
簡単に言えば「問題点や不満点を解決しておく」もしくは「問題点や不満点を解決する手順を考えておく」ということになります。もちろん、言葉で言うのは簡単ですが、実際には多角的に考えねばならず、とても大変なことです。
どうすればもっと購入者や利用者が増えるのか、顧客単価を上げながら、顧客満足度を上げられるのか。スピーディーにリアルタイムで対策し続けるのもカスタマーサクセスと言えるでしょう。
カスタマーサクセスが注目される3つの理由
カスタマーサクセスが注目される理由は主に下記の3つが挙げられます。
- ソーシャルやシェアの浸透
- 市場全体のサービス業化
- サブスクリプションの影響
それぞれの項目についてチェックしておきましょう。
ソーシャルやシェアの浸透
スマートフォンやSNSの普及により、顧客一人一人の声がインターネット上に反映されやすくなりました。もちろん、良い口コミや評価を受けることもあれば、悪い口コミや評価を受けることもあります。
顧客=ユーザーが抱えている不満や問題点が可視化されているのに、その問題や不満を放置すればするほど、顧客満足度は下がることになり、結果として直接的な売上減に繋がるということです。逆の見方をすれば、顧客が教えてくれた問題点や不満点を解決すれば、その顧客はリピーターやファンになってくれる可能性もありますし、その他の顧客を取り込むこともできるでしょう。
しかし、普段の仕事以外にユーザーの声を聞いて、解決するための手段を講じるのは簡単なことではありません。
極端な例で言えば、口コミサイトの書き込まれ方によっては、実際の接客や料理のクオリティに関係なく、お店に足を運んで貰えなくなるということです。商品で言えば、実際のスペックや性能部分は他より優れていても、サポート体制がダメ、問い合わせしても返事が来ない、返品や交換が遅い、またはしてくれないという口コミで溢れれば、やはり商品そのものを購入する顧客が減ってしまう状況となります。
カスタマーサクセスが注目され、BtoBのサービスが成り立つのも、このような事情が理由と言えるでしょう。
市場全体の成熟化やサービス業化
インターネットで気軽に商品やサービスを検索して比較検討し、自分に合ったものにお金を払う。そして継続して購入、またはサービスを継続して利用するのかは自分で決めるのがごく普通になりました。
同じようなサービスや商品が溢れる中で選んでもらうためには差別化する必要があります。今までは作るだけであとは流通経路に乗れば自然と売れましたが、付加価値として修理やサポート、保守やメンテナンスなど「商品そのもの」以外の部分のサービスがなければ、購入に至らないということもあります。
しかし、サービスやサポートなど付加価値の部分についても同じように真似されてしまえば、後は単なる値段の上下だけで選ばれてしまう結果となります。だからこそ、カスタマーサクセスによって、同じような商品、同じようなサービスの中から区別し、差別され、選ばれるような工夫をすることが注目されているのです。
スマホアプリやサブスクリプションの影響
Web上のサービスだけでなく、スマホのゲームやアプリに課金するというのもごく自然になりました。特定のサービスを継続で利用するためにサブスクリプションに加入、継続的に課金するのも当たり前の時代です。
しかし、似たようなサービスが溢れている状態であり、いつ他のサービスに切り替えられてしまうかわかりません。実際、スマホアプリのゲームのアップデート内容に不満があり、今まで課金していたけれど止めてしまったユーザーも少なくないですし、見たいアニメや映画が見終わったという理由で他のビデオオンデマンドのサービスに切り替える方もいます。
むしろ、顧客=ユーザーが自分の好きなタイミングや好きな期間だけ「課金」するのが自然な形になったと言えるでしょう。継続的に使ってもらうためには、他のサービスやアプリ、ゲームとの差別化をあらゆる部分で考えなくてはいけません。
まさにカスタマーサクセスが必要とされ、注目される理由でもあり、顧客=ユーザーを蔑ろにしない、しっかりと声を聞き、しっかりと反映する体制が求められている時代だということです。
まとめ
カスタマーサクセスによって顧客が成功体験をするというのは「喜ぶ」とか「楽しい」とか「嬉しい」を生むということでもあります。もちろん、売上などの金額、実績などの数字は大切ですが、顧客=人間であるという基本を忘れないことが、最も需要であると言えるでしょう。
むしろ、売上や実績よりも顧客を大切にすることによって得られるものを重視し、継続的、長期的な利益を求めるのがカスタマーサクセスの求める形でもあります。
同時に「愛着」や「ファン」といったような、単純に「好き」になってもらえる商品やサービスを目指すことも忘れないようにしてくださいね。
サクセスって響き、なんかイイ
この記事を描いたひと
企業のWeb担当者と制作会社の想いをつなげるメディア「untenna」の編集部。