「引用」「転載」「出典」の違い。制作者が知っておきたい著作権の定義とルール
コンテンツマーケティングを担当していると、書籍や他のWebサイトに掲載されているコンテンツを「引用」することがあります。「転載」や元のコンテンツを示す「出典」もありますが、トラブルを避けるためにはそれらの著作権法上の定義や仕様のルールをよく理解する必要があります。
ここでは「引用」「出典」「転載」の著作権法について解説します。
著作権を守るために「引用」「転載」「出典」を明記する
「引用」「出典」「転載」を明記するのは、著作権法を守るためです。
著作権法は、著作物を創作した人(著作者)の努力の結晶といえる著作物にまつわる、著作者の正当な権利を保護するための法律で、次の2つの権利を規定しています。
- 著作者人格権
著作物をとおして表現された著作者の人格を守る - 財産権としての著作権
著作物のさまざまな利用方法を定義し、原則として著作者の許可が必要であると定めている
「引用」「出典」「転載」は、この財産権としての著作権に関連しています。著作物である文章や画像のすべてまたは一部を利用または明記する理由は、まさに著作者の権利を守るためです。
コンテンツの全体または一部を使用する「引用」や「転載」、引用または転載する元となったコンテンツを表す「出典」では、どれも著作物である元のコンテンツが明記されることで、見た人が元の著作物を確認できるようになります。
Webコンテンツは近年、エビデンス(証拠)を示して自身のコンテンツの信頼性を示すものが増えてきました。おそらく今後も、「引用」「出典」「転載」は頻繁に用いられ、トラブルに備える必要も増すことでしょう。
「引用」の定義とルール
引用は、他の著作者の著作物をそのまま自分の創作物に用いることをいいます。おそらく目にすることも多いでしょう。ただし、これには一定の条件を満たす必要があり、Webコンテンツで用いるときも十分に注意しなくてはなりません。
ここでは「引用」について、次のことを解説します。
- 引用の定義と概要
- 引用するために満たすべき5つの条件
- 違法な引用とならないための注意
「引用」とは
引用は、著作権法で次のように規定されています。
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的条正当な範囲内で行われるものでなければならない。
著作権法第32条より
引用によって、公正な慣行に合致するものである限り、著作権者の許可なくコンテンツを利用できます。しかし、ここでポイントになるのが「公正な慣行に合致する」という要件です。引用はこの要件によって利用が規定・制限されるため、しっかり押さえておく必要があります。
「引用」を満たすべき5つの条件
合法に引用するためには「公正な慣行に合致する」という引用の要件を満たす必要があります。しかしやや抽象的といえるこの表現では、具体的にどうすればいいのかが分かりづらいでしょう。
ここでは「引用」のルールをより詳しく5つに分け、どのような視点や基準があるのかを解説します。
1. 引用する理由が明確にある
自分のコンテンツを構成する上で、引用するコンテンツがなくてはならない場合は、引用できます。引用は「エビデンス」として用いられることが多く、よくあるのは統計資料や研究結果などを引用してコンテンツの信頼性を高めるといった使い方です。引用する「必然性がある」ケースといえるでしょう。
2. 引用部分と他の主従関係が明確である
いくら引用に必然性があっても、コンテンツの大半を占めるようでは、どちらが引用したのかがわからなくなってしまいます。引用した内容が「主」となってしまうと、著作物を「無断転載」したと見なされても仕方ありません。
これはコンテンツの「量」だけでなく「質」についても同様です。引用部分はメインコンテンツを補完する程度にはとどめなくてはなりません。
3. 引用部分が明瞭に区別されている
いくら引用できるとはいっても、どれが引用部分なのかがはっきりしなければ、やはり著作者の権利は侵されているといってよいでしょう。わざと区別せず、あたかも自分の著作物であるかのようにしてしまうと、盗作と見なされる場合もあります。
引用するのが文章ならカギかっこで区切ったりフォントや色を変えたりして、可能な限り他と区別できるように示すこととされています。
4. 出典が明示されている
この場合の出典は「引用元」を指しますが、出典は引用部分のごく近くに、見る人にわかりやすく明記することとされています。(著作権法48条)
出典がなければ、見る人はすべてオリジナルのコンテンツだと誤解してしまいます。最悪の場合、盗用扱いされる恐れもあるので注意が必要です。
5. 引用部分が改変されていない
著作物は著作者が時間と労力のほかあらゆる資源を費やして作り上げた創作物です。引用する際少しでも改変してしまうと、著作権法で規定されている著作者人格権のうち「同一性保持権」に抵触したと見なされます。
この改変には、文章に含まれる句読点や文字の表記、改行位置なども含まれることには注意が必要です。元の文章を「一言一句変えてはならない」と考えるとよいでしょう。
例外としてWeb上で表記できない旧字体や異字体の漢字を常用漢字に置き換えるのは仕方ないかもしれません。しかしそれでも、字体を変更したことを明記しておく必要があります。
違法な引用にならないためには
上記のルールにあるとおり、引用でもトラブルに発展する可能性は十分あります。
- 出典(引用元)を明記していない
- 引用としながら引用部分を改変している
- 引用部分が質的または量的にも「主」となっている
違反すれば、著作権侵害に対する刑事上の罰則はもちろん、損害賠償請求や不当利得の返還請求といった民事事件として訴えられてしまいます。著作権法は著作者の権利を守るルールです。きちんと守るためには、著作者の立場に立って、要件を満たすよう配慮する必要があるでしょう。
「転載」の定義とルール
「転載」も引用と同じように、他の著作物の全体または一部を自分の作品に取り入れる方法です。引用ではあくまで「主」となるコンテンツにその一部分「従」として取り入れますが、「転載」では取り入れる方が「主」となります。
ここでは、転載にまつわる次のことを解説します。
- 「転載」の定義と概要
- 無断で転載できる著作物の例
- 違法な転載にならないための注意
「転載」とは
「転載」は、他から取り入れるコンテンツが大半を占める場合をいいます。そうなるともはや転載されたコンテンツがメインです。元のコンテンツそのものに極めて似ていることから、転載では著作権者の許可が必要とされています。
また引用しているつもりでも、引用に必然性がなく、必要の範疇を超えて引用されていれば引用ではなく無断「転載」です。
しかし「転載」できる要件については「著作者の許諾がある」以外は引用とかなり似ています。
- 著作者の許諾がある
- 自分のコンテンツと明確に区別されている
- 転載部分が改変されていない
- 出典が明記されている
無断で転載できる著作物
転載は原則として著作者の許諾なしではできませんが、著作権法は以下の2つのケースに限り、許可なく転載できると定めています。
- 国や自治体が周知することを目的として作成した広報資料、統計資料、報告書(著作権法第32条2項)
- 新聞や雑誌に掲載して発行された政治・経済・社会上の時事問題に関する論説(著作権法第39条)
これ以外のコンテンツを転載する場合は、必ず著作権者の許諾が必要と覚えるとよいでしょう。
違法な転載にならないためには
ブログなど一般に公開するコンテンツに転載するなら、著作権者の許諾を取れば違法にはなりません。ただ、気をつけたいのはその他の「明確な区別」や「転載部分の改変」「出典元の明記」です。1つでも満たさない要件があれば、違法になってしまいます。
また一般に公開しない、個人での利用の範疇での転載も違法ではありません。気に入った文章や画像を自分のスマートフォンやパソコンに複製し、個人的に楽しむだけなら合法です。
「出典」の定義とルール
「出典」とは、引用や転載の際に元となった著作物を指します。引用・転載とは違い、行為ではなく対象そのものを指し、どちらにおいても著作権法において明記することが非常に重要なものです。
明記する際も、見る人にとってわかりやすく示すことが求められます。Webサイトであれば直接リンクを張れば、クリックするだけで参照できるので便利です。書籍であれば正式な書名を間違えないよう記載する必要があるでしょう。
まとめ
文章や画像をWebサイトやブログで引用する場合は「出典」と記載し、引用元を必ず記載するようにしましょう。ただし、もしその引用が複製に近い引用なのであれば「転載」と記載してください。
▼実際の表示例
引用したい文章や画像がここに入ります。
出典:引用元のタイトルや名称がここに入ります
近年、インターネット上にはありとあらゆる情報が飛び交っています。その中で、公開する情報がより意味のある、正確な情報であることをきちんと示すには、適切なWebサイトや書籍などの情報を取り入れることも大切です。
そんなとき注意すべきは、他の著作物への配慮であり、著作権法です。自分のコンテンツに他の著作物を取り入れるには、引用や転載といった方法がありますが、どちらも出典を明らかにし、著作権法で規定された要件を満たす必要があります。
これからのコンテンツ作りには、引用や転載が欠かせません。参考・参照も含め、定義やルールを正しく理解し、著作権法を守ってきちんと運用していきたいものです。
ふむふむ。。。
この記事を描いたひと
企業のWeb担当者と制作会社の想いをつなげるメディア「untenna」の編集部。