新型コロナウイルスの影響で話題になっている「テレワーク」。職種によっては、仕事の効率が上がるとも言われていますが、実際テレワークとはどのようなものかご存じでしょうか?リモートワークや在宅勤務などと言う言葉もあり、違いが良くわからない方も多いと思います。
今回は、企業と社員から見たメリット、デメリットを参考に、テレワークとはどういうものなのか詳しく紹介していきます。
テレワーク、リモートワーク、フルリモート、在宅勤務の「言葉の違い」
テレワーク、リモートワーク、在宅勤務などさまざまな言葉がありますが、実際にどういう働き方をするものなのかわからない人が多いでしょう。ここでは、それぞれの言葉の違いについて詳しく解説します。
時間や場所にとらわれないテレワーク
テレワークとは、「テレ(tele)=離れたと所」「ワーク(work)=働く」という言葉を合わせた造語です。時間や場所にとらわれずに、柔軟な働き方ができるのが特徴ですが、テレワークには働く場所によって3種類に分けられます。
- サードプレイスオフィス勤務
シェアオフィスやコワーキングスペースなど、専門の事業者が提供する施設で仕事を行う - モバイルワーク
カフェやオフィスの移動時間の電車やバスなどで仕事を行う - 在宅勤務
自宅で仕事を行う
また、仕事スタイルの特徴としては、ICTと呼ばれる情報通信技術を活用することです。わかりやすく説明すると、パソコンやスマートフォンなどを利用してコミュニケーションをとることです。具体的にはメールやチャット、SNSでのやり取りなどが挙げられます。テレワークは、オフィスから離れた場所で働くことを意味するので、とても幅広い意味合いがあります。
オフィス以外の場所で仕事する「リモートワーク」
リモートワークとは、「リモート(remote)=遠く離れた」と「ワーク(work)=働く」の造語です。「遠隔地で働く」という意味では、テレワークとほぼ同じ意味を表しています。テレワークとの違いは、遠隔で働く頻度や勤務形態などによってレベル分けがされているところです。各企業によって考え方が異なる場合がありますが、主に4つのレベルに分けられるとされています。
- テンポラリーリモートワーク
短時間業務のみ遠隔地で行い、他はオフィス勤務 - リモートアウトソース
常時遠隔地での仕事で、外部契約の状態 - フルタイムリモートワーク
常時遠隔地での仕事で、正規雇用されている状態 - ハイブリッドリモートワーク
出勤が必要な日があり、企業に正規雇用されている状態。
このようなリモートの形態がありますが、各企業によって働き方はさまざまです。求人サイトを見ても、「一部リモート可」「フルリモート可」の2つの表記がされていることが多いようです。
自宅で働く「在宅勤務」
在宅勤務とは、その名の通り「自宅で仕事をすること」です。先ほど説明したように、テレワークの一部でもあります。
勤務形態は、会社に所属していることが多く、正規雇用や契約社員などがあります。テレワークと同じようにICTを活用して、コミュニケーションをとることもあるので、やり取りが必要な場合には、メールや電話、Skypeなどを利用します。
リモートワークのように、週の何日間は出社する必要がある勤務形態もあります。
世界的な普及率・日本での普及率
テレワークやリモートワークなどは、最近日本でも良く耳にするようになりました。しかし、世界では導入している企業や個人が多く、普及率がかなり高い国も多数存在しています。
ここでは、世界的に見たリモートワークの普及率について解説していきます。
アメリカやカナダなど、世界ではテレワークの普及率が高い
アメリカでは、テレワークの導入率が約85%にもなり、世界的に最も高いとされています。これには、アメリカの以下の制度が大きく関係していると考えられています。
- Job Description
職種やポジションごとに、個々の仕事範囲と責任などが明確化されている文書のこと - ホワイトカラー・エグゼンプション
労働賃金を時間ではなく、成果で評価して決める制度のこと
また、カナダでの普及率も非常に高く、テレワーク人口は全就業者の約19%を占めていると言われています。雇用関連制度は、アメリカと似ていることもテレワークが増えている理由の一つでしょう。法の規則はありませんが、カナダは、フルタイム就業者でも柔軟な働き方ができる人は42%、労働時間は年間1,700時間程度という特徴があります。
日本などのアジア諸国の普及率は世界的に低い
ここ最近話題になっているほどなので、テレワークの普及率が日本ではかなり低いことがわかるでしょう。しかし、日本だけでなく、アジア諸国全体を通して、世界的に普及率は低い傾向にあります。しかし、日本では11.5%の企業がテレワークを導入しており、アジアの中では高い水準になっています。
コロナウイルスや東京オリンピックもあることから、今後テレワークを導入する企業も増えてくるでしょう。
導入にあたる「企業」と「社員」のメリット・デメリット
テレワーク導入には、もちろんメリットはたくさんあります。しかし、同時にデメリットもあるので、しっかりと両方の面を理解しておきましょう。
企業が導入するメリット、デメリット
メリット
離職率の低下
テレワークの導入によって、働く場所や時間帯にとらわれずに家事や育児もできるので、女性の離職率低下に繋がります。また、ストレスも減るので精神疲労などで離職する人も減るでしょう。
リスク分散ができる
密閉され、人が多く集まるオフィスなどの空間は、感染リスクや災害が発生した際に大きな被害となります。最近では、コロナウイルスの影響が最も心配されていますが、自宅などで作業が可能になれば、リスクの分散も可能になります。
コスト削減
ICTでやり取りできることと、出勤の必要がなくなるので、紙などの費用や交通費などのコストを削減することができます。また、全社員フルテレワークの場合、オフィス自体がいらなくなることもあるでしょう。
生産性が向上する
ワークライフバランスが充実することにより、社員のモチベーションが上がるので生産性向上に繋がります。また、同僚や上司から話しかけられることもないので、一人で黙々と作業ができ、作業効率もアップします。
デメリット
新たな制度やシステムを導入する必要がある
特に、セキュリティ面は従来のものよりもしっかり整えなければなりません。オフィス内のみで管理していたものが、外部に漏れてしまわないように新たなシステムの導入やルールの見直しなどが必要になるでしょう。また、勤怠管理についても考え直さなければなりません。
コミュニケーションが減る
定期的にミーティングが必要な職種やプロジェクトの場合、コミュニケーションが減ってしまうので、情報共有がスムーズにいかない場合が考えられます。便利なツールを利用して、離れた場所にいてもコミュニケーションが取りやすい環境を構築しなければなりません。
社員から見たメリット、デメリット
メリット
ワークライフバランスの充実
子育てや介護をしている人でも家で作業できるので、時間や場所に縛られることがありません。プライベートと仕事の時間を両立できることにより、ストレスも軽減するでしょう。
通勤時間がなくなる
電車通勤の場合、オフィスにつくまでに無駄なエネルギーを使わなければならず、仕事の効率も下がります。今まで通勤していた時間やエネルギーを、仕事に費やすことができるでしょう。
作業に集中できる
オフィスなどは、仕事をする場所なので集中していると思われがちですが、一人で作業ができる仕事の場合、意外に自宅の方が作業がはかどります。同僚や上司から話しかけられる、周りの騒音などから解放されるので、ストレスフリーで仕事できるでしょう。
デメリット
自己管理が面倒
テレワークでは、自分で業務時間を管理する必要があります。休暇申請なども自分でしなければならないので、面倒に感じる人も多いでしょう。
職種や業務内容が限られる
接客をする職種に就いている人は、テレワークの導入は難しいでしょう。また、PCやタブレット端末などを用いた仕事に限られてきます。
企業側は事前にどんな準備が必要か
テレワークを導入しようと考えている企業で、失敗している事例もあります。テレワークを導入する際には、事前にしっかりと準備をしておくことが大切です。ここでは、具体的にどのような準備が必要か紹介します。
テレワーク導入前に見直す、定めるべきこと
まず、テレワークを導入する前に、自社にもともとあるシステムや制度の見直しが必要です。オフィス内だけで完結していたものが、外部にでるため、リスクが高まります。大きく分けて、3つの見直しが必要なので紹介していきます。
労務管理の見直しやルール策定
テレワークにも労働基準法が適用されます。しかし、従来の働き方とは異なるため労務管理を新たに見直す必要があります。就業場所や労働時間などは、あらかじめ就業規則に規定しておかなければなりません。<br />また、作業効率を落とさないためにも、連絡や情報共有の方法を決めておくことや、会社全体の方針の策定なども必要です。
評価制度や研修制度を作成する
今まで、対面で行っていた評価や研修制度も新たに作成する必要があります。既存の社員にはテレワーク導入前の研修、新入社員にはテレワークでできる研修制度なども検討しなければなりません。
研修期間のみ、オフィスで行うのも良いですが、skypeやチャットなど、便利なツールを用いて行えば研修期間からテレワークでの仕事が可能になります。
セキュリティ対策の見直しが必要
これは、テレワークを導入する際に最も重要と言っても過言ではないでしょう。今まで、オフィス内で完璧だったセキュリティでも、外部に持ち出す必要がでてくるとほころびが生じます。
外部と連携が可能な新たなツールを利用する、パスワード管理をするなども大切ですが、個人の利用方法を定めるルールなども決めた方が良いでしょう。ウイルス対策ソフト導入やSNS利用時のルールなど、明確に定めることで個人のミスによる、情報漏洩を防ぐことができるでしょう。
意外に必要なオフィス環境
オフィスが完全に必要なくなった場合には別ですが、テレワークを導入してもオフィスは存在しているものです。オフィス、テレワークどちらの社員でも同じような待遇やコミュニケーションが必要です。スマートフォンやメールを送るだけで出退勤ができるシステムの導入や、会議は必ずオンラインで行うなど、両者に差が生まれないような環境を作ることも心掛けましょう。
向いている業種・向いていない業種
国を挙げて推奨されつつあるテレワーク制度ですが、全ての職種で導入できるというわけではありません。ICTを活用して行う必要があり、直接対面する必要がない職種に、どうしても限られてしまします。<br />では、どのような業種がテレワークに向いているか見ていきましょう。
向いている業種
ITエンジニア
パソコンがなければ業務が成り立たない仕事の一つ。ITエンジニアと言っても、SEやサーバエンジニア、マークアップエンジニアなど様々です。ロボットや製品開発関係のエンジニアは、完全テレワークは難しい面もありますが、基本的にエンジニアは最もテレワークを導入しやすい業種でしょう。
クリエイティブ職
Webサイトのデザインなどを構築するWebデザイナーや、Webサイトを執筆するWebライターはテレワークと相性が良い業種です。成果物もわかりやすく、個人の評価も付けやすいでしょう。
営業職
向いていないと思われがちですが、営業職もテレワークと相性が良い業種です。顧客対応で外出することが多いため、会社に出勤せずに、訪問先と自宅で直行直帰した方が生産性も向上します。ただし、顧客との対面は必要になります。
事務職、カスタマーサポート
総合事務職系は、パソコンを利用して一人で作業することがほとんどなので、積極的にテレワーク化するべき業種です。また、カスタマーサポートのテレワークも最近では増えてきています。AmazonやAppleなどは、在宅勤務制度をすでに導入しています。
管理職
上記で紹介した業種の管理職は、オフィスにいてもパソコンやスマートフォンを用いての管理になるため、テレワークに向いています。何か問題が発生した場合でも、チャットや電話などを用いて部下と連絡がとれるので、オフィス以外でも仕事ができるでしょう。
向いていない業種
医療、福祉職
患者の治療をする医師や、子供たちの世話をする保育士など必ず人と接する業種は、テレワークには向いていません。
接客、販売職
コンビニエンスストアやスーパーなどの販売店では、どうしても人と接する必要があります。また、市役所や銀行などの窓口業務も、顧客対応なので、テレワーク導入は難しいでしょう。
生産、製造業
機械による作業が多いと思われがちですが、重要な部分は人の手が加わっています。将来的には、全自動のロボットが開発される可能性もあるかもしれませんが、故障時や細かい作業などもあり、今の技術ではテレワーク化は難しいです。
実際のセキュリティ面は?
安全にテレワーク制度を利用するためには、企業も社員も同時に気を付けなければなりません。ここでは、セキュリティ面を強化するためにできる対策を紹介します。
企業が取るべき対策
企業がテレワークを導入する時は、社外でのセキュリティ確保が重要になります。例えば、以下のような事例が挙げられます。
- 端末管理の徹底
- 通信に強度の暗号化
- 自社専用のWi-Fiを契約する
- 個人にセキュリティ対策ソフトインストールを義務化
自由な場所で働けるのがテレワークの魅力ですが、外部のWi-Fiを利用する場合、情報漏洩のリスクが高まります。セキュリティソフトのダウンロードはもちろんですが、通信の暗号化もした方が良いでしょう。
社員が気を付けること
テレワークの情報関係で起きる問題は、社員個人によるミスなども多く見受けられます。以下のようなことに気を付けて一人一人が対策しましょう。
- セキュリティソフトをダウンロードする
- 通信環境の良い場所で作業する
- 外では自社専用や自分のWi-Fiを利用する
- のぞき見防止フィルターを貼る
特に、自宅以外の場所で作業をする際には、いつも以上にセキュリティ面に気を付けて作業した方が良いでしょう。
まとめ
日本でも、テレワークを導入する企業が増えてきました。これから導入を検討している企業も、テレワーク制度で働きたい個人の方も、テレワークがどういうものか詳しく理解することが大切です。
正しい理解と、対策をとることで、より柔軟で自由な働き方ができる、テレワークが広まっていくのではないでしょうか。
自分のペースで働けるのはイイね
この記事を描いたひと
企業のWeb担当者と制作会社の想いをつなげるメディア「untenna」の編集部。