いまさら聞けない!リードナーチャリングとは何かを徹底解説
PCやスマホの普及により、マーケティング手法が一変しました。広告やイベント、テレマーケティングを活用し企業が情報を伝える「プッシュ型」から、SNSやオウンドメディアを用意しユーザーの能動的な検索行動を頼りに見込み客を獲得していく「プル型」のマーケティングが浸透しつつあります。
そんな中、見込み客の新規開拓を見込んだ「リードジェネレーション」ではなく、見込み客を商品やサービスを購入する顧客へと育ててゆく「リードナーチャリング」が注目されています。
資金力で大企業にはかなわない中小企業にとっては、大々的に広告を打つよりもコストが小規模で済むオウンドメディアやメールマガジン(以下、メルマガ)などで見込み客を顧客へと地道に育てていくことが必要になってきます。そこで、国内ではまだまだ浸透していないリードナーチャリングとは何かについて解説していきます。
リードナーチャリングとは
リードナーチャリングとはその名の通り、見込み客(リード)を育てること(ナーチャリング)を指します。Web広告や展示会、テレアポなどで獲得してきた見込み客を、メルマガやステップメール、セミナーを通じてコミュニケーションを続けることで、商品やサービスの利用を検討し商談を開始する段階までもっていくのがリードナーチャリングの役目です。
後述するように見込み客が商品やサービスの購入を検討するための工程が長期化しています。とくに不動産やBtoBなど高額の商材では検討の時間が長くなるため、リードナーチャリングが重要だと考えられています。
リードナーチャリングがなぜ重要なのか
従来のマーケティング手法では、テレアポなどで獲得した見込み客のうち案件につながりそうなものをリストアップしてゆき、営業をかけていくのが一般的でした。営業から説明を受けて、その場で発注したというケースも過去では多く見られました。
しかしWebの普及により、情報が氾濫する世の中になってしまいました。見込み客が商品やサービスを認知した後、すぐさま購入に行動を移さなくなっています。SNSや比較サイト、ECサイトなどから情報収集し、じっくり検討した上で購入へと行動を移すようになってきています。
またBtoBの場合、多くの人が商品やサービスの購入決定に関与します。稟議や決済など工数の増加やそれに伴い工程が長期化する傾向は、大企業になるほど強まっています。そこで、見込み客が顧客になるまで、有益な情報を中長期にわたって提供し続け、製品やサービスの購入意欲を高めていく必要があります。
せっかくテレアポや展示会で見込み客を獲得しても顧客にならなければ、大きな機会損失につながりかねません。時として、競合他社に顧客を奪われてしまうでしょう。クラウド営業ロボットを開発・運営するMarketing-Roboticsが2019年に実施したアンケートによると、インサイドセールスを実施している企業は回答数の13.2%しかおらず、まだまだリードナーチャリングがうまく機能していないといえます。BtoBでは一般的に、見込み客になってから購入を決断するまで1~2年と長期化しています。その間、見込み客をしっかりつかんでおくためにも、リードナーチャリングは重要です。
テレアポで獲得した見込み客のリストや展示会で集まった見込み客の名刺が有効活用されず、休眠状態にあるケースもあります。あるいは商談が継続していたものの、商品やサービスの購入までには至らず、休眠状態になった顧客もいるでしょう。こうした将来顧客になる可能性のある見込み客に再び光を当てることも、リードナーチャリングの役割になるでしょう。新規で見込み客を獲得するためには、コストや時間、手間がかかります。しかし休眠顧客の場合、ある程度ニーズが明らかになっているため、商品やサービスの購入までこぎつけられる可能性は高いといえるでしょう。
リードジェネレーションとの関係
見込み客(リード)を増やす(ジェネレーション)のが、リードジェネレーションです。商品やサービスの購入を検討する顧客になる可能性があるため、リードジェネレーションもマーケティング手法において重要な意味をもちます。
しかし、先述したように見込み客の獲得が即顧客の獲得にはつながりません。企業がオウンドメディアやSNSを運営し、見込み客の獲得につながるインバウンド型のマーケティングに力を入れ始めた一方で、顧客へと変える施策には上手く着手できていないのが現状だと言えます。そこで、リードジェネレーションの獲得はもちろん、見込み客を顧客へと育てていくリードナーチャリングがますます求められてくるでしょう。各見込み客が欲している情報を提供し、信頼感を増していかないといけません。
リードナーチャリングのメリット・デメリット
リードナーチャリングにも、メリットとデメリットとがあります。
リードナーチャリングのメリット
獲得した見込み客のうち、すぐに商品やサービスの購入意欲のない見込み客を顧客へと変えることで、集客コストのロスを取り戻せることが、リードナーチャリングのメリットの1つめとして挙げられます。営業では商品やサービスを購入する可能性の高い見込み客にアプローチしていきますので、そうでない見込み客は軽視されがちです。
その反面多くの企業が見込み客を獲得するために、オウンドメディアなどインバウンドな施策だけではなく、展示会やキャンペーン、広告などアウトバウンドな施策を併用しています。多くのコストをかかえて見込み客を獲得していると言えるでしょう。一部の見込み客にターゲットを絞ってアプローチすることは、見込み客獲得に費やしたコストの大半を無駄にしてしまうことを意味します。
見込み客が自社に対するブランドや信頼感を高めていくことも、リードナーチャリングのメリットだと言えるでしょう。商品やサービスの購入がビジネスの失敗につながってはいけません。そのため、商品やサービスの購入のために多くの人が関わり、慎重に意思決定を行います。こうした失敗が許されない意思決定を行うために、商品やサービスを提供する企業のブランドや信頼感は重要視されるでしょう。
見込み客ごとに丁寧に応対したり、自社しか知りえず見込み客にとって有用な情報を提供したりできれば、見込み客は徐々に信頼感を高めていくことになります。購入を意思決定するための判断材料が増え、結果として商品やサービスの購入につながるでしょう。
顧客が購買を決断するための期間を短くすることも、リードナーチャリングのメリットだと言えるでしょう。見込み客を獲得できたからといっていきなり営業をかけてしまっても、見込み客は購入を決断しないでしょう。最悪の場合、こうした見込み客を手放し、競合他社に奪われるリスクもあります。
見込み客に対し適切なタイミングで有用な情報を提供し、購買意欲を高めておけば、営業などでの最後の一押しで商品やサービスの購入に辿りつけられるなど、見込み客が顧客に変わるサイクルを短期化できます。
リードナーチャリングのデメリット
先述したように、見込み客が商品やサービスの購入を決断するまでに、BtoBでは時に1~2年という長いスパンがかかります。そのため、リードナーチャリングには時間がかかるだけでなく、そこに割く人的リソースも大きくなるでしょう。時には、メルマガやステップメールの送信などリードナーチャリングの補助的ツールであるMA(マーケティング・オートメーション)ツールが必要になります。こうしたMAツールのためのシステム導入費が多く企業にのしかかる可能性もあります。
リードナーチャリングは、顧客へとつながる見込み客を大量に抱えていることが大前提です。リードジェネレーションへの対応がまだ上手く機能していない企業はまず、見込み客を導くチャネルや各チャネルにおける見込み客の数を増やすなどの施策が必要になるでしょう。オウンドメディアで見込み客を獲得する場合には、自社のブランドや商品、サービスを認知していないユーザーにしっかりとニーズを理解してもらうコンテンツ制作が必要です。
リードナーチャリングを行ったのち、商談を行い商品やサービスの購入へと結びつけるのは営業担当者が行います。そのため、営業担当者との連携はもちろんのこと、営業力が不足していれば、せっかく築いたリードナーチャリングが無駄に終わってしまうでしょう。
リードナーチャリングの手順
では、リードナーチャリングの具体的な手順を確認していきましょう。
①見込み客のリストを集約する
展示会やセミナーといったアウトバウンドで獲得した見込み客の名刺や、オウンドメディアなどに届けられた問い合わせや資料請求などインバウンドで獲得した見込み客のリストなど、複数のチャネルで獲得した見込み客の情報を一箇所に集約します。
ユーザーが記載した個人情報もリストに集約しましょう。有効活用されていない見込み客の情報は意外と多いです。そういった情報をくまなく探し、できるだけ見込み客を増やすのが、リードナーチャリングへの第一歩です。
②見込み客のセグメント化
見込み客のニーズや性質をグループ分けするのが、「セグメント化(セグメンテーション)」です。不動産であれば、一戸建ての購入を検討する見込み客とワンルームマンションを賃貸したい見込み客などを振り分けることで、各セグメントに最適なアプローチを取ることが可能になります。
とくにアウトバウンドやインバウンドなど、見込み客を獲得するチャネルは多種多様化しているため、展示会に偶然顔を出した人とすでにWebなどで情報収集を済ませて商品やサービスの購入を検討中の人とでは、モチベーションやニーズは全く異なります。見込み客のセグメント化がきめ細やかなリードナーチャリングに重要になるでしょう。
③コンテンツの作成
セグメントごとに、各見込み客が抱える課題を解決するよう、コンテンツを作成します。購入する確度の低い見込み客は商品やサービスに関する情報を収集中で、購入によるメリットやリスクを顕在化できていません。
そこで、これまで成約した企業が自社の商品やサービスの購入で課題を解決した事例など、初期段階の見込み客が欲している自社しか知りえない情報を提供することで、購買意欲を徐々に高めていくことが可能です。プロフェッショナルによる信頼度の高い情報を提供することで、自社に対する信頼度を高められます。
④インサイドセールスを実施
従来の営業のように顧客に直接訪問するのではなく、電話やZoomなどウェブ会議ツールを活用して営業を行うのが「インサイドセールス」です。従来の外勤型の営業では訪問するための時間や手間、コストがかかるなど人的資源に限界があるため、商品やサービスの購入が期待できる顧客しかアプローチできませんでした。
そこでインターネットを活用して、より手軽に購買意欲の高い見込み客に対してアプローチし、商談につなげることが可能です。
リードナーチャリングの手法
リードナーチャリングの手法は多岐にわたります。
①オウンドメディアの活用
企業が運営し、自社の情報を提供するのがオウンドメディアです。見込み客を獲得するだけがオウンドメディアの役割ではありません。セグメント化された各見込み客のニーズに沿った情報をオウンドメディアやホワイトペーパーという形で提供することで、自社に対する信頼を獲得していくこともリードナーチャリングの重要な施策のひとつだと言えるでしょう。
②SNSで情報発信
FacebookやTwitterなどSNSで自社のアカウントを作り、絶えず情報発信するのも必要でしょう。新着情報を見込み客にいち早く届けたり、ファンページなどコミュニティサイトを構築したりすることで、ユーザー同士がコミュニケーションする機会を増やすことも可能です。
③メルマガやステップメール
リードナーチャリングの代表的な手法として、メルマガやステップメールが挙げられます。メルマガは新商品の情報やオウンドサイトの更新情報、キャンペーン情報などを見込み客に対していち早く届けることが可能です。
これに対してステップメールとは、個々の行動に合わせて適切なタイミングで送信されるメールを指します。基本的な情報を提供するメルマガに対し、個々のニーズに合わせて適切なタイミングと頻度でステップメールを送信できるなど、パーソナライズ化できます。
④セミナーの開催
BtoB企業で有効なリードナーチャリングの手法がセミナーの開催です。見込み客が知りたがっているテーマでセミナーを開催し、参加者の満足度を高めます。また現場で担当者と直接接触でき、個々の参加者にあった課題解決の手助けを行うことも可能です。
セミナーに参加する見込み客は意欲が高く、商品やサービスを購入する確度が高いと考えられるので、セミナー終了後もフォローメールなどでアプローチしていきましょう。
リードナーチャリングを効率化するには
見込み客を獲得するチャネルが多岐にわたることに加えて、見込み客のニーズも幅広いと予想されます。こうした多種多様化した見込み客のリードナーチャリングを効率化するには、どのようにすればいいのでしょうか。
MAツールの導入
MAツールとは、IT技術によってマーケティングを効率化するツールを指します。マーケティングにおいて資源を最適配分するのにMAツールは必要です。リードジェネレーションの一部自動化や集約した見込み客のリストにもとづいたセグメント化、メルマガを必要な見込み客に適切なタイミングで送信など、これまでチャネルごとに個別に対応していた作業を一括して行えます。
またMAツールは見込み客の行動を計測できるため、商品やサービスを購入する確度の高い顧客であることを営業担当にタイミングよく伝えることも可能です。
KPIの設定
リードナーチャリングのために実施したキャンペーンの成果を把握し改善へとつなげるためには、効果を定量的に測定する指標を定める必要があります。そのためには、目的を達成するための達成度合いを定量化する「KPI(重要業績評価指標)」の設定が必要です。
KPIの設定は、見込み客の獲得や営業段階における最終的な成約率の把握だけにとどまりません。リードナーチャリングにおけるKPIの設定として、たとえばメルマガの開封数やクリック数、見込み客を獲得してから商談につながるまでの期間、キャンペーンによるアポイントの獲得数や獲得率などが挙げられます。
まとめ
日本ではリードジェネレーションの施策は各企業で力を入れられている反面、先述したようにMAツールなどデジタルツールを駆使したインサイドセールスの普及率は欧米に比べてまだまだ進んでいないのが現状です。コロナ禍により外出を前提とした直接営業は難しくなり、内勤型の営業がますます重要になるでしょう。
各企業には埋もれたままの休眠顧客や各営業担当者が抱えたままの名刺など、有効活用されていない見込み客のリストが多く存在するといいます。こうした見込み客を顧客へと育てることで、商品やサービスの購入へとつながる顧客を増やすことが可能になるでしょう。
この記事を描いたひと
企業のWeb担当者と制作会社の想いをつなげるメディア「untenna」の編集部。